消化器内科外来は月、火、水、木、金曜日に診療を行っています。
消化器疾患の診療は、幅広い領域の診断・治療を行う為に種々の検査及び処置が効率よく実施できることが必要です。この為、現在各消化器領域の専門医を中心に6名の消化器内科医師と3名の後期研修医師が日々診療に従事しています。
現在特に意欲的に取り組んでいる疾患・検査・処置などを簡単にご紹介します。
- 消化管領域
千葉ろうさい病院は内視鏡センターが充実しており内科・外科合わせて5名の消化器内視鏡専門医(指導医1名)が診療にあたっています。内視鏡センターとして(内科・外科の合計)上部消化管内視鏡検査(処置を含む)約4100例、下部消化管内視鏡検査(処置を含む)約2800例を実施しており、苦痛の少ない経鼻内視鏡による上部消化管検査も導入され年間900例を超える方が検査を受けられています。
また、飲むだけで(小腸を中心とした)消化管の診断が可能となる小腸カプセル内視鏡(ギブン社製)も導入し、"苦痛の少ない内視鏡"の実践に努力しています。
早期胃癌・早期大腸癌を中心とした内視鏡治療は近年急速に進歩しており、従来開腹手術となっていた腫瘍例のうち粘膜内に留まるものは内視鏡治療にて治癒できるようになりました。
広範囲の腫瘍の治療が可能である粘膜下層剥離術(ESD;腫瘍の下層に局注液を注入し腫瘍を含む粘膜を特殊な高周波メスで薄く剥離・切除する治療法、内視鏡治療としては熟練を要する手技です)は、胃ESD約90例、大腸ESD約40例の多数例を治療しており年々増加しています。大腸ポリープに対しては粘膜切除術(EMR;粘膜下に生理食塩水を注入、ポリープを挙上し、スネアーという器具にて切除する治療法。単純なポリープ切除より穿孔・出血等の合併症が少ない利点があります)を約680例に実施しています。
また、緊急症に対しては、夜間や休日を中心とした消化管出血例に対する緊急内視鏡処置が年間約200例に及び急患への対応を行っています。
現在、消化器内科医師数の増員を除々に図っており、24時間対応できる体制となっています(完全待機制)。
進行消化管癌に対しては最新の医療情報に従った化学療法や放射線療法(リニアック)を行い、治療効果をあげています。特に大腸癌においては近年治療法が急速に進歩し、転移のある例においても長期の予後改善が認められます。 - 肝疾患
肝機能障害の診断から、肝炎・肝硬変の診断治療、肝不全及び肝癌の治療に至るまで肝臓疾患を総合的に診断・治療できることが当科の特色です。
肝疾患には3名の専門医を中心に診療にあたっています。
検診等で肝障害を指摘される例は年々増加しており、当科では外来で行う血液検査・腹部エコー検査・CT検査・MRI検査等や、短期入院にて実施する肝生検に至るまで肝疾患の総合的診断を行い、非アルコール性脂肪性肝炎・ウイルス性肝炎・アルコール性肝障害・自己免疫性肝炎・原発性胆汁性肝硬変症・薬剤性肝障害・胆石性肝障害などの病態に応じた治療を実践しています。
肝炎治療においてはC型肝炎に対する直接型抗ウイルス剤の導入により従来のインターフェロン治療とは比較にならない副作用の軽減が図られ、95~100%の患者さんに著効が得られています。B型肝炎では核酸アナログ製剤の使用により肝炎の進行が抑えられ、肝硬変・肝癌への進展を阻止できるようになってきました。いずれの治療ともに公費助成が適応され、治療に伴う経済的な負担が軽減されています(詳細は厚生省ホームページを参照下さい)。
肝癌治療においては原発性肝癌を中心に、ラジオ波焼灼療法(RFA)(年間約20~30例)などの局所治療から、肝動脈化学塞栓療法(TACE)(年間約20~30例)・放射線療法・分子標的治療薬・免疫チェックポイント阻害薬などによる薬物療法を進行度に応じて選択しています。
また消化器外科との連携も密であり、手術治療の適応も十分考慮されています。
肝不全の進行例に見られる難治性腹水は治療に苦慮するケースが多く見られますが、腹水濾過濃縮再静注法(お腹に溜まった腹水を穿刺し一旦専用バッグに取り出し、その後濾過器を通して細菌などを除去し、濃縮器で水分を減量し静脈内に戻すことで、アルブミン等の有用な成分を体内に戻す腹水治療法、1回に約3㍑程度の腹水を処置できる)や腹腔-静脈シャント術(腹腔内に溜まった腹水を皮下に通した特殊な管でゆっくり鎖骨下静脈内に戻す治療法)など積極的に治療に取り組んでいます。 - 膵・胆道疾患
膵胆道系の内視鏡検査・治療は約600例を数え、千葉県下でも有数の内視鏡治療を実施しています。
総胆管胆石治療においては年間150例を超える内視鏡的乳頭切除術(胆石を除去するために胆管の末端部(十二指腸開口部)を高周波メスで小さく切開し拡張する治療法)を行っており、各種砕石治療も合わせて開腹手術をせずに内視鏡的に総胆管胆石の治療が実施できます。
閉塞性黄疸に対する内視鏡的胆管ドレナージも多数実施しています。
進行胆道・膵臓癌は予後不良の疾患ですが、当科では積極的に化学療法に取り組んでいます。
以上、述べてきたように消化器疾患は多岐にわたっており、診断過程で各種画像診断は非常に重要なものとなっています。CT・MRI・腹部エコー検査などは各技師の方々の多大なる協力の下に"早く正確な診断"が可能となっており、消化器疾患診療の充実に寄与しています。